ソーシャルレンディングと法律

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約2年が経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

ソーシャルレンディングと【金融商品取引法】

国内でソーシャルレンディング事業を営む場合、投資家から資金を募るために、第一種、ないしは第二種金融商品取引業の登録を受ける必要があります。
そして、金融商品取引事業者としての事業に不適正な事由等(行為や、状況)があれば、金融商品取引法に基づき、行政処分が下されることとなります。

maneo行政処分の法的構成

ソーシャルレンディング・サービス「maneo」運営会社は、平成30年7月、金融庁からの行政処分を受けました。
画像引用元:maneo(マネオ)

関東財務局の公開資料によれば、ソーシャルレンディング・サービス「maneo」(マネオ)の運営会社であるmaneoマーケット株式会社に対する行政処分は、maneoの運営状況に、

  • 平成29年法律第37号による改正前の金融商品取引法第38条第8号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に掲げる「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示を(略)する」行為、ならびに、
  • 金融商品取引法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当する状況

が認められたため、金融商品取引法第51条の規定(内閣総理大臣は、金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる。)に基づき、下されたものであるとのこと。

トラストレンディング運営会社「エーアイトラスト」登録取り消し処分の法的構成

ソーシャルレンディング・サービス「トラストレンディング」の運営にあたっていた、エーアイトラスト株式会社は、平成31年3月、関東財務局から、

  • 金融商品取引法第52条第1項の規定に基づく、登録取消し処分、ならびに、
  • 同法第51条の規定に基づき、業務改善命令、

という、行政処分を受けましたが、その根拠となったのは、

  • 金融商品取引法第38条第9号(平成29年法律第37号による改正前は同条第8号)に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に掲げる「金融商品取引契約の締結の勧誘に関して、虚偽の表示をする行為」に該当する行為、
  • 金融商品取引法第38条第9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第2号に掲げる「金融商品取引契約の締結の勧誘に関して、重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」に該当する行為、ならびに、
  • 金融商品取引法第51条に規定する「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当する状況、

が認められたことです。


参考:
エーアイトラスト株式会社に対する行政処分について|関東財務局

ラッキーバンクへの行政処分の法的構成

ソーシャルレンディング・サービス「ラッキーバンク」の運営会社、ラッキーバンク・インベストメント株式会社は、平成31年3月、

  • 金融商品取引法第52条第1項の規定に基づく、登録取消し処分、および、
  • 同法第51条の規定に基づく、業務改善命令、という、

ふたつの行政処分を受けました。
その法的根拠となったのは、ラッキーバンク社の運営状況に、

  • 金融商品取引法第52条第1項第7号に規定する「金融商品取引業又はこれに付随する業務に関し法令又は法令に基づいてする行政官庁の処分に違反したとき」に該当する状況、ならびに、
  • 金融商品取引法第51条に規定する「金融商品取引業者の業務の運営に関し、公益かつ投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当する状況

があったと認められたことです。


参考:
ラッキーバンク・インベストメント株式会社に対する行政処分について|関東財務局

ソーシャルレンディングと【貸金業法】

ソーシャルレンディングという仕組みはそもそも、

  1. ソーシャルレンディング事業者が、投資家(おもに個人投資家)から、投資資金を募り、
  2. そうして募った資金を、ソーシャルレンディング事業者が、別の企業(資金需要者)に対して、融資し、
  3. その後、ソーシャルレンディング事業者が、元利金を利息とともに回収したうえで、
  4. 投資家に対し、分配する、

というものです。

すなわち、ソーシャルレンディング事業者は、

  • 資金を集め、また、利益を分配する、金融商品取引業者、としての側面と、
  • 資金を第三者に貸し付け、利息とともに元金を回収する、貸金業者としての側面を、

有していることとなります。

このため、国内でソーシャルレンディング事業を適正に営んでいる企業は、上掲の第二種(もしくは、第一種)金融商品取引業の登録とは別に、「貸金業者」としての登録を受けています。

貸金業法への配慮が、ソーシャルレンディングの匿名化の原因となっていた

長らくソーシャルレンディング業界を悩ませてきた、借り手の「匿名化」問題。その原因は、貸金業法への配慮に合った、と言われています。
画像引用元:maneo(https://www.maneo.jp/apl/fund/detail?fund_id=7332)

国内で、貸金業の登録を受けていない事業者や個人が、事業として、第三者への資金融資を行った場合、貸金業法への違反を問われることとなります。

実は、長きにわたり、ソーシャルレンディング事業者から資金融資を受ける「借り手企業」の具体的な法人名等は、ソーシャルレンディング投資家に対して、開示されてきませんでした。
ソーシャルレンディング事業者が掲載しているファンド情報を見ても、借手の会社名はイニシャル表記されている程度であり、いわゆる”匿名化”が為されている状態が続いていました。

これはひとえに、

  • 投資家に、借り手企業の具体的名称が開示されてしまえば、
  • 実質的には、(貸金業者としての登録を受けていない)一般個人投資家が、ソーシャルレンディング事業者を経由して、第三者に資金融資をしていることと、同義である、と見做されかねず、
  • ひいては、投資家や関係者が、貸金業法違反を問われる可能性がある、

という懸念があったためです。

しかしながら、”実際の融資先情報が確認できない”というのは、わたしたち個人投資家からすれば、大きな不安要素であり、その透明性の向上は、国内ソーシャルレンディング業界の大きな課題のひとつとなってきました。

2019年からは、匿名化廃止の動きも本格化

そうしたなか、2019年3月に、業界の監督官庁にあたる金融庁から、

  • (一定の条件を守れば)ソーシャルレンディング投資を行う投資家は、貸金業法にいうところの”貸金業者”としての行為を行っているとは見なされない、
  • ひいては、ソーシャルレンディング事業者は、投資家に対し、ファンドの具体的な資金融資先情報を開示しても、差支えない、

とする公的見解が公表されました。

これ以降、投資家への情報開示に積極的なソーシャルレンディング事業者を中心に、具体的な借り手情報の開示がスタート。
ソーシャルレンディング業界の透明性向上に、大きな一石が投じられたことは、記憶に新しいところです。

ソーシャルレンディングと【利息制限法】

貸金業者が融資先に対して課す金利・利息に、一定の上限を定めているのが、利息制限法にあたります。
ソーシャルレンディング投資を行うにあたって、わたしたち個人投資家にとっての一番の魅力は、各ファンドの「期待利回り」です。
ただし、同時に忘れてはならないのが、ソーシャルレンディング事業者から資金融資を受ける「借り手企業」が支払っている利息は、

  • わたしたち個人投資家にとっての「期待利回り」に、
  • ソーシャルレンディング事業者が収受する手数料を上乗せした、金利

となっている、ということです。

昨今、銀行の貸出金利も、一昔前と比べると、各段に低金利となりました。
そうした時代において、ソーシャルレンディング事業者が(金銭消費貸借契約を通して)借り手企業に課す金利は、決して、低い物ではありません。
そして、そうして「借り手企業に課される金利」は、利息制限法の定め【以下】の金利となっていることが、必須条件となります。


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