【勉強会では教えてくれない】ソーシャルレンディングを1年やってみた私が伝えたい5つのこと
個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約1年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は500万円前後。
30代男性会社員・首都圏在住。
2018年初旬に私がソーシャルレンディングを始めてから、約1年が経過しました。
自分の中での整理もかねて、この1年間を経て、私がソーシャルレンディングに関して感じていること、そして、「これからソーシャルレンディング投資を始めよう」と考えている読者の皆さんに伝えたい内容を、まとめてみたいと思います。
目次
ソーシャルレンディングをやってみたきっかけ。
それまで本格的に投資に取り組んだことは無かった私。
本業がそこそこ忙しい立場なので、預金感覚で、気軽に投資できるような手法を探していました。
いろいろ情報収集をしている中で、投資ブロガーの方々を中心に盛り上がりを見せていたのが、ソーシャルレンディングでした。
1万円程度の少額から投資できる、という気軽さもあり、とりあえずは勉強がてら、ということで、いろいろなソーシャルレンディング事業者に口座を開き、投資をスタートしてみました。
最初はクラウドクレジットからスタート。
最初に口座を開いたのは、確か、クラウドクレジットだったように記憶しています。
若いころに国外をいろいろ旅行した経験があるので、
「どうせ投資するのなら、日本以外の国に投資してみたいな」
と思ったのがきっかけです。
ファンド一覧を見ていて、期待利回りもかなり高かったので、
- 為替ヘッジのついているもの、
- 償還歴のあるもの、
を中心に、少しずつ、投資を進めていきました。
オーナーズブック、SBIソーシャルレンディング、maneo…と、少しずつ手を広げていく。
投資口座の開設、ファンド選び、出資…という段取りはなんとなく呑み込めましたし、
「分散投資が大事」
という意見も多くみられましたので、ある程度慣れてきたら、いろんなソーシャルレンディング事業者に、どんどん口座開設を進めました。
オーナーズブックは、不動産担保がついている、という点を魅力に感じましたし、SBIソーシャルレンディングは、あの有名なSBIグループがやっているソーシャルレンディングサービスだから、という、ごくシンプルな理由で、安心して開設を進めました。
maneoについては、
「maneoに口座開設するだけで、(クラウドリースやキャッシュフローファイナンス、アップルバンクなど、)複数のソーシャルレンディングサービスに、一括で、口座開設ができる」
という点に、強い魅力を感じたのを覚えています。
気づけは、20社以上に分散投資。
あれよあれよという間に、口座開設をしているソーシャルレンディング事業者の数は増えていき、気づけば20社以上に。
口座開設はしてみたけれど、一向に新規ファンドが組成されない(もしくは、新規ファンドが公開されても、すぐに資金枠が埋まってしまって、出資できない)、という事業者もありましたので、出資額には、ばらつきがありますが、多いところで数十万円、少ないところでは数万円くらい、というのが、おおまかな出資状況です。
出資総額も(累計で)500万円前後くらいになりました。
現在は出資先を絞り込み中。
昨今の報道にもあります通り、いろんなソーシャルレンディング事業者で、いろいろなことがありましたので…。
どの投資家もそうだと思いますが、私も現在は、出資するソーシャルレンディング事業者の絞り込みを進めています。
イメージとしては、5社以下くらいのソーシャルレンディング事業者に絞り込みをして、その他のソーシャルレンディング事業者については、出資しているファンドから資金が戻って来たら、出金し、メインのソーシャルレンディング事業者へと資金を移動してしまう予定です。
詳しくは後述しますが、あまり手を広げ過ぎずに、3社~5社くらいの事業者を使って、自分のペースで投資を継続するのが妥当かな、と、最近は考えています。
「ソーシャルレンディングをやってみてよかった」と思う点。
とりあえず1年間ほどソーシャルレンディング投資をやってみたうえで、
「(いろいろなことがあったけど)やってみて、良かったな」と思う点は、いくつかあります。
①ちゃんとしたソーシャルレンディング事業者のファンドは、ちゃんと利益を出してくれた。
投資ですから、リスクがあることは重々承知していましたが、それでも、始めての挑戦でしたから、
「本当に、資金は返ってくるのかな」
「実際にお金は増えるんだろうか?」
と、最初は随分と、おっかなびっくり、始めたものです。
ただし、結論から言えば、ちゃんと運用をしてくれたソーシャルレンディング事業者においては、
- 約束通りの期限までに(※中には、早期償還によって、予定よりも早い、というケースもありましたが)、資金は償還してくれましたし、
- 「期待利回り」として提示されていた通りの利回りで、しっかりと運用してくれました。
最初のファンドが償還を迎えるまでは、正直、ちょっと不安だったのですが、だんだんと慣れてくるものですね。
なにはともあれ、利益を出すことを目的として始めた、ソーシャルレンディング投資ですから、きちんと目論見通りに、提示通りの期待利回りで、約束通りの償還期限までに、資金を増やして返してくれたソーシャルレンディング事業者には、当然、感謝していますし、今後も継続して、お付き合いしていくつもりです。
②投資についていろいろと勉強する契機になった。
ソーシャルレンディング投資を始めるまで、投資については、ほぼ全くといっていいほど、知識がない状態でした。
投資関係の勉強会などにも、それまで参加したことはありませんでした。
さらに、ソーシャルレンディング投資において事前知識が必要となるような、
- 「担保」に関することだったり、
- 「確定申告」に関する知識だったり、
そうした物事についても、ほとんど何も知らない、という状態から、投資をスタートしました。
その分いろいろとトラブルもありましたが、おかげさまで、これまであまり触れてこなかったような分野の知識について、
「仕方ない、勉強しよう!」
と思える、いいきっかけになったのも、事実です。
これまでは見向きもしなかった国税庁のホームページなども、積極的に情報収集で訪れるようになりました(笑)。
ソーシャルレンディングをやってみたうえで気づいた、ソーシャルレンディングの問題点。
前述しましたように、いろいろと良いこともあったソーシャルレンディング投資ですが、反面、実際にソーシャルレンディング投資をやってみて初めて気づいた、問題点というか、
「ソーシャルレンディングの、困ったところ」
についても、いろいろと考えさせられることが多くありました。
①借り手の情報が見られないのは、やはり困る。
よく話題になっていますが、ソーシャルレンディング投資の場合、ソーシャルレンディング事業者からお金を借りる、いわゆる「借り手」に関する情報は、私たち個人投資家の立場からは、一切、見れません。
この点についても、正直、特段の事前知識はなく、投資をスタートしたのですが、各社のファンドを見て、借り手事業者の呼称が、「事業者M」とか「事業者C」のように表記されているのを見たときは、「大丈夫か?」と不安になりました。
その後いろいろと勉強して、これは、ソーシャルレンディング事業者がわざと情報を秘匿しているのではなく、貸金業法の規制の関係なんだな、という点などは、ある程度、飲み込めたのですが、それでもなお、実際問題として、これは不便です。
その不便さが頂点に達したのが、ラッキーバンクの行政処分問題。
匿名化されていた実際の貸付先は、ほとんどが、ラッキーバンク社長の親族の方が経営している法人だった、という件です。
当然、身内ですから、融資審査も不十分だった、とのこと。
私自身、ラッキーバンクのファンドにはいくつか出資していたのですが、そのうち複数のファンドが、延滞に巻き込まれる、という事態となりました。
②税制上は、FXや株式投資のほうが得。
これも、実際にソーシャルレンディング投資を始めてから気が付いたのですが、ソーシャルレンディング投資を経て得た分配金収益は、税務上、総合課税の対象となります。
前述しましたように、私の場合、本業がそれなりに忙しく、決して多くはありませんが、ある程度の給与所得を得ている立場ですので、総合課税されたときの税率は、かなりのものです。
実際の税率は、勿論、人によるのでしょうが、例えば、かなりのリスクをとって、期待利回り10パーセントのファンドに出資、運よく無事に満期償還を迎えたとしても、実際の手取りは7パーセント弱程度とか、累進税率によっては5パーセント前後とか、そういう結果となってしまうケースがあります。
この点で言えば、申告分離課税の対象となるFX投資等のほうが、よほど有利です。
こうした税制上の不利については、出来るだけ早く、解消されてほしいな、と思います。
そもそも、ソーシャルレンディングという仕組み自体には、投資家利益云々の前に、社会的な利益も、それなりにあると思うんです。
「銀行」から間接金融で資金調達するか、上場して「市場」から直接金融で資金調達するか、という2択が主だった、企業の資金調達手法に、「クラウドファンディング+レンディング」という新たな選択肢が提供されるのは、明らかなメリットです。
同時に投資家も、一定のリスクを負いながらも、その余の投資手法と比較して高めの利回りを、ある程度の再現性のもとに狙っていける、というのであれば、これもまた、大きなメリットです。
なぜそのようなメリットが複数方面に創出できるか、といえば、それはやはり、「テクノロジーを活かしているから」です。
このような社会的利益、いわゆる”ソーシャル・グッド”があるスキームなので、政府においても、ソーシャルレンディング投資には、税制面において、後押しする姿勢を検討してくれればな、と思います。
…もっとも、昨今のソーシャルレンディング事業者の行政処分状況を考えると、そのステップまで行きつくには、少なくとも、もう少し、時間がかかりそうですが。
1年間ソーシャルレンディングをやってみた私が伝えたい、5つのこと。~公共事業詐欺も発生?
まだまだ投資初心者の範疇を出ない私が申し上げるのは恐縮ですが、せっかくの機会ですので、いくつか、私なりの考えを、申し添えさせて頂きます。
①ソーシャルレンディング事業者選びは慎重に。|公共事業を騙った、虚偽のファンド説明も
ソーシャルレンディング投資の際には、
- ソーシャルレンディング【事業者】選びと、
- ソーシャルレンディング【ファンド】選び、という、
2つのステップがあります。
このうち、後者も、勿論、とても大切なプロセスですが、それ以上に、前者のプロセス、すなわち、「ソーシャルレンディング事業者選び」は、ソーシャルレンディング投資の成否を左右する、大変重要なステップです。
例えば、先日、2度目の行政処分勧告が大きなニュースとなっていた、トラストレンディングのケースでは、
- ファンド情報によると、借り手事業者は、公共事業関係のプロジェクトに、コンサルティング業務を行う、と記載されていましたが、
- 実際には、そうした公共事業は存在せず、ひいては、コンサルティング業務も、存在しない。
という実態が、証券取引等監視委員会の検査結果にて、明らかにされていました。
要は、ソーシャルレンディング事業者が不誠実であれば、そのような事業者が公開しているファンド情報など、いくら一所懸命に読み込んでも、無意味だ、ということです。
ですから、
「ファンド選び」<「事業者選び」
だと、私は思います。
②分散投資は確かに重要だが、分散しすぎも問題。
ソーシャルレンディング投資において、分散投資の大切さは、どれだけ強調しても、強調しすぎ、という事にはなりません。
たとえば私の場合、前掲のトラストレンディングやラッキーバンク、いずれにも、ある程度の金額を出資していましたが、その他のソーシャルレンディング事業者にも資金を分散していたからこそ、致命的なダメージは受けないで済みました。
もしも、全ての資金を、トラストレンディングやラッキーバンクに集中させていたら…と想像すると、恐ろしくなります。
ただし、「いくらでも分散投資をすればいい。20社でも30社でも、資金を分散すればいい」かと言うと、そうではないのでは、と、昨今、思い始めています。
分散投資の手を広げれば広げるだけ、1つのソーシャルレンディング事業者への依存度は下がりますが、その反面、問題のあるソーシャルレンディング事業者に当たってしまう確率も高まります。
ソーシャルレンディング事業者への投資口座開設は至極簡単であり、だからこそ、むやみやたらに投資口座開設・資金分散をしてしまいがちですが、管理の煩雑を避けるためにも、実務上、分散は3社~5社程度にとどめておいたほうがいいように感じています。
- 上場企業や、その100パーセント子会社が運営しているソーシャルレンディングサービスや、
- 株主・出資者、取締役の身元がしっかりしているところ、といった具合に、
自分の中で基準を決め、ある程度、ソーシャルレンディング事業者を絞り込んだうえで、
「過度な分散投資はしない」
ことが、これからのソーシャルレンディング投資におけるリスク軽減のためには、むしろ重要になってくるのでは、と思っています。
③ファンドは、シリーズもので、実績のあるファンドを選ぶ。
ファンド選びのときは、
- 利回りや、
- 担保有無、
- 資金の集まり状況など、
いろんなことが気になると思うのですが、このうち、「利回り」と「資金の集まり状況」については、出来るだけ気にしないようにするのがいい、と感じています。
「利回りを気にしないほうがいい」というのは、要は、「高い利回りに誘惑されないようにする」ということです。
これだけ金利の安い日本において、年利10パーセントを超えるような金利で資金調達をしよう、と考えている借り手企業は、実際問題として、ちょっと心配です。
「高利回り」という点に魅力を感じてソーシャルレンディング投資に興味を持たれた方は多いと思いますが(※私もそうでした)、あまり高すぎる期待利回りを提示しているファンドは、避けた方がいいと思います。
あと、「資金の集まり状況」についても、考え過ぎないほうがいい、具体的には、「資金が集まっているファンド = いいファンド」とは、限らない、と思います。
往々にして、「〇〇キャンペーン」と書かれていたり、期待利回りが高めに提示されているファンドには、人気が集中しやすいですが、そのようなファンドが、
「きちんと無事に満期償還を迎えてくれて、予定通りの利回りを達成してくれる見込みの強いファンド」
かどうかは、分からないわけです。
昨今、私の場合は、「ファンド選び」についてはあまり神経質に考えておらず、
- シリーズものとして実績があり、
- 私自身、実際に出資を行ったことがあるファンドシリーズで、
- 無事に満期償還を受け取ったことのあるファンドの、最新号に、
淡々と、手元資金の余裕状況に応じて、追加出資を行うような形態をとっています。
ストレスも無いですし、ある程度自動的に投資を行うことが出来るようになるので、個人的には、楽です。
※ただし、ファンドシリーズとして実績のあるファンドでも、結局のところ、借り換えによる自転車操業を繰り返しているだけ、という可能性もありますので、注意が必要です。
④最初から税引き後の利回りで検討する。
さきほども述べましたが、ソーシャルレンディング投資の場合、現在の税法上、あまり税制面で優遇されているとは言い難い状況にあります。
特に、ある程度の給与所得を得ておられる方で、それなりの税率に日々、頭を悩ませておられる方は、「最初から、税引き後の期待利回り」を考えて、投資是非の判断を為さることをお勧めします。
あと、これは盲点になりがちですが、ソーシャルレンディング投資の収益は、確定申告内容によっては、翌年の「住民税額」にも影響します。
税金が増えるのは勿論困るでしょうが、「住民税額に影響を与える」ということは、確定申告時の要領によっては、お勤め先の会社の、住民税特別徴収税額(=給与から天引きされる住民税の額)にも、影響が出る可能性がある、という事です。
会社員の方で、お勤め先の会社が、社員の投資活動等に何らかの制限を設けておられるような場合、あらかじめ、ご注意為されることをお勧めします。
⑤本格的に資金注入したい方は、法人格による運用検討を。
私も現在、日ごろから付き合いのある税理士に相談中ですが、ソーシャルレンディング投資を、ある程度の規模の金額でやっていかれることを想定している人は、あらかじめ、法人格での投資口座開設を念頭におかれると、良いかもしれません。
個人で投資するのと比べ、法人格での投資とする場合、
- (個人の累進税率の状況によっては)利益金にかかる実効税率が低くなる場合がありますし、
- 損金計上も比較的柔軟になります。
※個人格で投資しながら、「ソーシャルレンディング投資は、私の個人事業である」として、投資の勉強等に支出した費用を損金計上したい、と考えたとしても、税務上、それが通るか、と言われると、なかなか、難しいようです。 - さらに、法人格でなければ活用できないような節税策も、いろいろあります。
例:掛け金の一定割合を損金計上できる保険商品など。勿論、やりすぎは禁物です。
上掲のようなメリットもありますので、投資規模によっては、法人格での運用を検討為さると、良いかもしれません。
※なお、法人格での投資とする場合、法人形態によっては、法人設立費用や、毎期の決算申告費用等、個人の場合であれば不要であった資金が別途、必要となる場合があります。
最後に、「ソーシャルレンディング投資をやってみたい」という方へのメッセージ。
拙い体験談に最後までお目通しを頂き、有難うございます。
業界としてはまだまだ未成熟で、トラブルも少なくない、ソーシャルレンディングではありますが、面白い投資分野であることは確かであり、しっかりとした事業者選び・ファンド選びを習得すれば、期待利回りも低くない投資手法です。
私個人としては、上掲致しましたような注意点に引き続き留意しながら、自分のペースでコツコツと、出資を継続してまいりたいと考えています。
いつの日か、どこかのソーシャルレンディング事業者のセミナー・勉強会などで、お会いできるような日を、楽しみにしています。
それでは、失礼致します。
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