【種類別】ソーシャルレンディングの危険性を科学する。

寄稿者紹介

個人投資家Y.K氏。
2018年初旬からソーシャルレンディング投資を始め、約3年ほどが経過。
合計20社以上のソーシャルレンディング事業者に投資口座を開設し、累計投資額は400万円以上。
30代男性会社員・首都圏在住。

高利回りで話題のソーシャルレンディング投資ですが、投資である以上、一定の危険性を伴います。
本記事においては、ソーシャルレンディングの危険性について、

  • 危険性の概要・種類
  • 危険性が実現してしまった具体例
  • 私が考え、実践している、それぞれの危険性の、実践的な軽減策

に焦点を当て、考察していきましょう。

ソーシャルレンディングの危険性の概要・種類を知る

ソーシャルレンディングの危険性の概要・種類を把握することが欠かせません。

敵を知れば、百戦危うからず。まずは、ソーシャルレンディングの危険性の概要を掴みましょう。

ソーシャルレンディング投資において考慮すべき危険性は、大きく分けて下記の2つに分類されます。

  1. ファンドリスク
  2. 事業者リスク

まずは、それぞれの危険性の概要を把握しておきましょう。

ソーシャルレンディングの危険性その1【ファンドリスク】の概要

本記事執筆本日現在、日本国内には20社以上のソーシャルレンディング会社があり、
それぞれのソーシャルレンディング会社が、日夜、大量のファンド(=案件)を組成しています。

わたしたち個人投資家は、各案件への出資検討に際しては、
各案件の内容をしっかりと読み込み、特に危険性には十全に注意を払ったうえで、慎重に、投資是非の判断を行う必要があります。

この投資是非の判断にミステイクがあった場合や、
投資是非の判断そのものにはミステイクは認められないものの、社会的・マクロ的な要因に(多くの場合は、運悪く、)巻き込まれることによって、
出資中のソーシャルレンディングファンドが、延滞や、最悪の場合、デフォルト・貸し倒れ、という憂き目に遭う危険性があります。

また、そのような事態までは至らずとも、
満期償還を迎えたソーシャルレンディングファンドの最終的な成績(損益)が、マイナス、すなわち、元本割れとなってしまう、という危険性も、あり得ます。

こうした危険性については、ソーシャルレンディング投資家の間で、「ファンドリスク」と呼ばれています。

ソーシャルレンディングの危険性その2【事業者リスク】の概要

固有の案件にトラブルが発生する「ファンドリスク」とは異なり、
複数の案件を組成・提供しているソーシャルレンディング会社自体が、不適切な業務運営を行っている、という危険性を意味するのが、「事業者リスク」です。
本記事執筆本日に至るまでの間に、日本国内では、3つのソーシャルレンディング会社が、運営上の問題を金融庁から指摘され、結果として、行政処分を受けています。

ソーシャルレンディング会社が実際に行政処分を受けると、その後、当該ソーシャルレンディング会社が新規組成を予定していた借り換えファンドの組成や資金応募が進まない、等のトラブルが発生し、
わたしたち個人投資家としては、当該ソーシャルレンディング会社の案件に出資していた場合、結果として、延滞や貸し倒れに巻き込まれる危険性が大きくなります。

ソーシャルレンディングの危険性の具体的な実例を知る

ソーシャルレンディングの危険性の具体的なケーススタディに入ります。

ここからは、各インシデントの具体的なケーススタディに入ります。

ここからは、ソーシャルレンディングの危険性のタイプごとに、これまで実際に発生した、具体的なトラブルケースを見てみましょう。

ソーシャルレンディングの危険性その1【ファンドリスク】の具体的ケース

まずは、「ファンドリスク」タイプの危険性が、具体的に現実のものとなって仕舞ったケースから、見ていきます。

クラウドクレジットの、為替ヘッジ無ファンドの場合

私も多額の資金を出資させて頂いてるソーシャルレンディング会社、クラウドクレジット。
中でも私が多く出資させて頂いているファンドに、「東欧金融事業者支援ファンド」、というものがあります。
満期償還歴も非常に多く、私も好んで出資しているファンドなのですが、
このように、為替ヘッジ付と、為替ヘッジ無タイプの双方が用意されていることが分かります。

ソーシャルレンディングの危険性のうち、ファンドリスクを説明すべく、クラウドクレジットのファンド例を掲出。
引用元:クラウドクレジットのファンド一覧から引用

同じ「東欧金融事業者支援ファンド」でも、上段の82号は為替ヘッジ付であり、円建て(JPY)。
これに対して、下段の78号は、為替ヘッジが付かないユーロ(EUR)建てとなっていることが分かります。
為替ヘッジ手数料が無い分、為替ヘッジ無の78号のほうが、為替ヘッジ付の82号より、想定利回りが若干高利となっていることも特徴です。

このように、「為替ヘッジ有り」「為替ヘッジ無し」の2タイプが用意されている、「東欧金融事業者支援ファンド」ですが、
このうち、「為替ヘッジ無し」のタイプについては、

  • 現地通貨建ての運用そのものは、予定通り、順調に運用・償還されたのだが、
  • 為替変動の結果により、日本円建ての最終損益がマイナスとなって仕舞った、

というケースが実在します。

最も分かりやすい例が、「東欧金融事業者支援ファンド1号」(為替ヘッジ無し)です。
同ファンドの満期報告書がこちら。

ソーシャルレンディングの危険性をご説明すべく、クラウドクレジットの第1号ファンドを例示
引用元:https://crowdcredit.jp/operation/entry/3/6

満期報告によると、

  • 予定子会社返済利息額である12,355.36ユーロに対して、実際に実現した子会社返済利息額は、満額である12,355.36ユーロを達成。
  • しかし、運用開始時に1ユーロ当たり123.60円だった換算レートが、運用終了時に1ユーロ当たり112.49円へと変化(=円高・ユーロ安)した結果、
  • 円建てでの運用損益は、358,827円の損失となってしまった。

上記顛末が綴られています。

それにしても、1ユーロ当たり123.60円から、同じく1ユーロあたり112.49円への円高・ユーロ安進行とは、尋常ではありません。
その原因は、2016年6月に実施された国民投票の結果決定した、ブレグジットでした。
※東欧金融事業者支援ファンド第1号の運用期間は、2016年2月25日から2016年9月25日です。

これに対して、ほぼ同じ時期(2016年3月16日から2016年10月25日)に貸付・運用された、「【為替ヘッジあり】東欧金融事業者支援ファンド1号」の場合は、
募集時期待利回(9.0%)とほぼ同程度である、10.0%の収益率を実現しています。
(※情報ソースは、「【為替ヘッジあり】東欧金融事業者支援ファンド1号」の満期報告書です)

なお、クラウドクレジットの他ファンド例をよく検証していくと、為替ヘッジ無しタイプのほうが、為替ヘッジ有りタイプのファンドよりも、最終的なリターンが大きい、というケースも、散見されます。
「為替ヘッジが付いていたほうが絶対に成績が良い」とは、決して言い切れないわけです。
なぜなら、「為替ヘッジ有り」タイプの場合、ソーシャルレンディング投資家が為替による差損を被ってしまう危険性をヘッジする反面、為替差益を得る可能性も、捨て去ってしまっているから、です。

このため、実際に「為替ヘッジ有り」で運用するか、「為替ヘッジ無し」で運用するか、は、わたしたち個人投資家の判断に委ねられているわけですが、
私は基本的に、「為替ヘッジ有り」タイプで運用するようにしています。

少なくとも、ソーシャルレンディング投資においては、差益を享受する可能性を放棄しても尚、差損を被る危険性をヘッジすることの効能は、余りある、と判断しているため、です。

maneoの不動産担保付きファンドの場合

ソーシャルレンディングの危険性を語るうえで、マネオの過去ファンドの延滞を検証します。
引用元:https://www.maneo.jp/apl/information/news?id=7549

本記事執筆本日現在、maneoの、「不動産事業者CU社」を最終債務者とする案件において、延滞が発生しています。

延滞の発生が多数号に渡っているため、詳説は割愛致しますが、

  • いずれの案件においても、大なり小なり、不動産に担保権が設定されており、
  • 担保権の設定順位は第一位。
  • また、各案件のLTV値(=Loan to Value。担保物の評価額に対する貸付額の割合を示します。LTV値が低ければ低いほど、基本的には危険性の小さいファンド、と解されます)は、決して、法外に高いわけではない。
  • それにも関わらず、担保物の換価(=売却)による返済原資の確保が難航している。

という特徴があります。

基本的に、不動産担保付き案件の場合、無担保案件と比べ、万が一の延滞発生時、担保権に基づき、不動産を換価する権利があるわけですから、債権回収シーンにおいて、有利な立場にあります。
ましてや、設定されている担保権が、第一順位抵当権(もしくは、第一順位根抵当権)である場合、何者にも劣後することなく、換価できる、という立場にあります。

そうした状況下であるにも関わらず、なぜ、換価・債権回収に、ここまで手間取っているか、というと、
スルガ銀行の不正融資問題以来、各金融機関からの、不動産投資向けの融資審査が、極めて厳しくなっている、という事情が影響している可能性があります。

担保物である不動産を市場で換価(=売却)するためには、当然、買い手が必要です。
そして、買い手が余程の資産家で無い限り、買い手は金融機関等から、資金調達を行う必要があるわけですが、
この資金調達の部分が、市況の影響を受けて硬直すると、当然、換価が滞り、必然的に、スムースな担保権執行・債権回収が、阻害されてしまう危険性があります。

このように、マクロ的な要因によって、
平常時であれば十分に保全効能を得られるはずのでソーシャルレンディングファンドですら、平和裏な満期償還・元本返済が難しくなってしまう、という危険性は、無視できぬところです。

キャッシュフローファイナンスのファンドの場合

ソーシャルレンディングの危険性を概説するうえで、キャッシュフローファイナンスの延滞案件を解説します。
引用元:https://www.cf-finance.jp/information/news?id=520

こちらは、「キャッシュフローファイナンス」というソーシャルレンディング会社の案件にて、延滞が発生して仕舞った時の情報リリースです。
実際に延滞が発生した案件のスキーム図を見てみると、

ソーシャルレンディングの危険性を考慮する上で、ファンドのスキーム図を確認します。
引用元:https://www.cf-finance.jp/fund/detail?fund_id=353

このように、
延滞を発生させてしまった最終債務者たるKB社は、手元キャッシュフローの改善を図るため(=要は、資金繰りを行うために)、
キャッシュフローファイナンス社の関連会社たるAH社に、
自社の在庫商品を、一旦、代金一括払いで買い取ってもらって、
その後、改めて、AH社から、当該在庫商品を、毎月一定数ずつ、買い戻していく、というスキームが組まれていることが分かります。

特段違法性のない、単なる資金繰り策であることは分かりますが、
それにしても、いささかいびつな資金繰り策であることは、一目瞭然かと思います。
逆に言えば、それだけ、本事業にとっての最終債務者たるKB社の手元資金流動性は、低い状態にあった、
より端的に言えば、お金に困っている状況だったのではないか、
すなわち、財務的に危険性の高い状態にあったのではないか、という点が、推察されるものと思います。

基本的に、各ファンドの平和的な満期償還のためには、最終債務者の順調な事業運営は欠かせません。
資金繰りに窮している最終債務者の場合、ほんの小さなインシデントで、完全にキャッシュフローがショートしてしまう危険性を具備しています。

このように、案件のスキーム上、明らかに経営状態の悪い、資金繰りに窮しているような会社が、最終債務者として、ファンドの平常運行のカギを握ってしまっている場合、
当該ソーシャルレンディングファンドは、大きな危険性を含有してしまう事となりえます。

ソーシャルレンディングの危険性その2【事業者リスク】の具体的ケース

ここまで、「ファンドリスク」と呼称される危険性の具体例を確認してきました。
ここからは、「事業者リスク」と呼ばれる危険性タイプについて、
その実例を見ていきます。

maneoの場合

続いて、ソーシャルレンディングの危険性のうち、事業者リスク、と呼ばれる危険性を解説していきます。まずはマネオのケースからです。
引用元:https://www.maneo.jp/

日本のソーシャルレンディング業界の草分けともいえる存在の業者で、
当然、国内ソーシャルレンディング業界では、大きなシェアを誇る会社でしたが、
平成30年7月13日付けにて、行政処分を受けることとなってしまいました。
証券取引等監視委員会からの行政処分勧告に基づき、関東財務局がmaneoマーケット株式会社に対して発した行政処分がこちらです。

ソーシャルレンディングの危険性を語るうえで、マネオへと下された行政処分を解説します。
引用元:http://kantou.mof.go.jp/kinyuu/pagekthp032000761.html

証券取引等監視委員会による検査で、特に問題視されたのが、
ファンドの運用者であるグリーンインフラファンディング社が、資金を適切に管理・運用していないことを、
ファンドの資金勧誘者たるmaneoマーケット株式会社が、きちんと把握していなかったこと。
正確な資金運用・管理状況の把握を怠った状況で、個人投資家に対する勧誘を継続してしまっていたわけですので、
この点が強く問題視され、行政処分へと至ってしまいました。

ラッキーバンクの場合

ソーシャルレンディングの危険性を語るため、続いては、ラッキーバンクの場合を解説します。
引用元:https://www.lucky-bank.jp/

不動産担保付きでありながら、比較的利回りの高いファンドを組成することで、人気を集めていた会社ですが、
maneoマーケット株式会社と同様、こちらは平成30年3月初旬、行政処分を受けることとなりました。

ソーシャルレンディングの危険性を確認すべく、ラッキーバンクに対して下された行政処分を確認。
引用元:http://kantou.mof.go.jp/kinyuu/pagekthp032000711.html

同社の場合、

  • ファンドからの資金の、実際の貸付先が、社長の親族企業であり、このため、貸付時審査が、投資家への事前説明に反し、極めて緩い状態であったこと。
  • 担保物となる不動産の評価額算出においても、適正な評価額算定が為されているとは言い難い状況であった、とのこと。

主に上記が問題視されました。

みんなのクレジット の場合

ソーシャルレンディングの危険性の代名詞ともいえる、みんなのクレジット事件。
引用元:https://m-credit.jp/

ソーシャルレンディング業界で、最初に行政処分を受けたのが、こちらの「みんなのクレジット」。
平成29年3月30日付けにて、行政処分が下されました。

ソーシャルレンディングの危険性を強く体現している、みんなのクレジット事件です。
引用元:http://kantou.mof.go.jp/kinyuu/pagekthp032000621.html

  • 集めた資金を、社長が個人的な借金の返済に充てる、
  • 担保有り、と書いてあったファンドが、実際には無担保、等、

およそ信じがたいレベルの不正行為が行われていた、というケースです。

先のmaneoマーケット株式会社やラッキーバンクの場合、行政処分の内容はあくまでも「業務改善命令」でしたが、
「みんなのクレジット」社に限っては、業務停止命令が発行されていることからも、
どれだけ重大なインシデントであったか、ということが見て取れます。

ソーシャルレンディングの危険性の軽減策

ソーシャルレンディングの危険性を軽減するための具体的な施策を検証します。

ソーシャルレンディングの危険性をヘッジするための”一手”とは。

ここまで、「ファンドリスク」と「事業者リスク」という、ソーシャルレンディング投資に付き物の、2つの危険性について、その具体例を確認してきました。
ここからは、実際のソーシャルレンディング投資において、それぞれの危険性を、いかに具体的な施策によって軽減していくか、という点に絞って、確認してみましょう。

ソーシャルレンディングの危険性その1【ファンドリスク】の軽減策

為替ヘッジ有無を選択するケースにおいては、原則的に、為替ヘッジ付を選ぶ

クラウドクレジットの「東欧金融事業者支援ファンド」を例にとり、

  • 現地通貨建てでは、順調なファンド運行であったにもかかわらず、
  • 為替変動(解説した例では、ブレグジットの影響がありました)によって、
  • 「為替ヘッジ無し」タイプは、最終損益がマイナスとなってしまった。
  • これに対し、同時期に組成されたファンドでも、「為替ヘッジ有り」タイプは、当初の目論見通りの利回りを達成した。

というケースをご説明させて頂きました。

この点を鑑み、私の場合は、「為替ヘッジ有り」「為替ヘッジ無し」の2タイプからの恣意的な選択が可能な局面においては、基本的に、「為替ヘッジ有り」を選択しています。

「為替差益の可能性を逸失するのは惜しいではないか」とお考えの方も、いらっしゃるものと思いますが、
私は、個人的に、まず優先すべきは、為替差損の危険性をヘッジすることではないか、と考えています。
為替差損の可能性を理解しながらも、為替差益を最大化すべくトライする、という投資手法を取りたいのであれば、
FX投資などのほうが、適しているのでは、と、私は考えています。

不動産担保付きであったとしても、大きな社会変動などに運悪く遭遇した場合は、危険性があり得る、と考える

maneo社のファンドを例にとり、

  • 不動産に第一順位抵当権(もしくは、第一順位根抵当権)が設定され、
  • かつ、LTV(Loan to Value)も法外に高いわけではない、というケースにおいても、
  • マクロ的な社会情勢の影響を受け、不動産の換価・債権回収が、難航する危険性がある。

ということを、確認して参りました。

ともすれば、「不動産担保付きで、かつ、抵当権が第一順位、また、LTVもさほど高くない」という場合、
わたしたち個人投資家としては、そのファンドの保全効力に惚れ込み、
「もしも借り手が期限の利益を喪失するようなことがあったとしても、担保権を行使し、十全に債権回収を図ることが出来るだろう」
と、安心し、
危険性への留意を失念しがちです。

勿論、そのような保全設定の為されたファンドは、無担保・無保証ファンドなどと比べると、圧倒的に保全が効いていることは確かです。
しかし、そのようなファンドであったとしても、
業界や社会全体に、大きなインパクトを与えるような出来事があれば、時にネガティブな影響を受ける危険性が有るのだ、ということを、忘れないようにしましょう。

例えば、不動産担保、に限って言えば、今後、税制改革の影響も考えられるでしょう。
現在、減価償却による節税メリットを享受すべく不動産投資に取り組んでいる人も多くいますが、その点の税制が改革されてしまえば、そうした投資家は一気に引いていくことでしょうし、
相続税における不動産投資のメリット、すなわち、土地として所有しているよりも、上物として賃貸物件があったほうが有利、等と言う税制についても、将来、改革されるようなことがあれば、同上でしょう。

税制の問題以外にも、日本が地震大国であることを踏まえると、大きな震災が発生する危険性も、心配されるところです。
日本の不動産は現在一部の外国人投資家(機関投資家含む)にも人気がありますが、大きな地震などの有事があれば、彼らの資本も引いていくでしょう。
そうすれば、担保物たる不動産の換価に、大きな支障が生じる可能性があります。

ソーシャルレンディング投資家としては、このような危険性を、忘れぬ事が肝要です。

ファンドの内容をよく読み、特に最終債務者の経営状況には注意を払う。

大切なことなので、繰り返しますが、
ファンドの平和裏な満期償還のためには、基本的に、何といっても、最終債務者の順調な事業運営が欠かせません。

大前提として、借り手にとって、ソーシャルレンディング会社からの借入金は、高金利です。
そのように調達金利の高い資金については、さっさと返済を済ませ、より低利の借入金からのリファイナンスを行う、と、
そのようなまともな経営計画をもった会社が、借り手として当然最も好ましい、という事になります。

「ソーシャルレンディング投資において早期償還は多いが、これを嫌気してはならない=早期償還はむしろ喜ぶべきものと受け止める」というのは、こういう事情によります。

この点を勘案すると、

  • 以前借りたファンドの満期償還のための返済原資が確保できず、借り換えファンドを組成してもらうことで、何とか資金をつないでいる、という案件・借り手や、
  • ファンド概要を読み込む限り、どうも、借り手は、無理な資金繰りを試みているように思われ、ひいては、借り手の現在の経営状況が、今一つ良くないのではないか、と懸念される、といったケース、というのは、

危険性の大きい案件として、当然、避けて通るべきである、という事になります。
この点はファンド概要をよく読み込み、
表面的な高利や、「既に満額達成直前」といったような指標は、敢えて無視し、各ファンドのストーリーの理解に集中すれば、
おのずと、危険性の高い案件を遠ざけ、より慎重な判断ができるようになるはずです。

貸付・運用期間の短いファンドを選ぶ

ファンドの貸付・運用期間中、私たちの資金は、ファンドに拘束されます。
その間、何か社会的に大きなインパクトをもたらすような出来事が発生した場合、
その出来事は、最終債務者の事業や、債務者が提供している担保物の換価に、多大な悪影響を及ぼす危険性があります。

この危険性をヘッジ・軽減するために、わたしたち個人投資家ができることと言えば、
とにかく、貸付・運用期間の短いファンドを選ぶ、ということです。
その分、時間リスクを軽減することが出来るからです。

  1. 24カ月の貸付・運用。年利は10%。
  2. 12カ月の貸付・運用。年利は8%。

上記のような2ファンドがあった場合、多少の年利差は無視して、後者を選ぶべきだと、私は考えます。
2年間資金を拘束されるファンドに出資するくらいであれば、
1年間拘束のファンドで2回転、さらに言えば、半年間拘束のファンドで4回転させるほうが、ソーシャルレンディング投資における危険性の回避、という点では優れた施策であると、私は思います。

ソーシャルレンディングの危険性その2【事業者リスク】の軽減策

ファンドリスクという危険性の軽減・回避策についての私の考えは、上記した通りです。
続いて、事業者リスクという、これまた、ソーシャルレンディング投資ならではの危険性を、いかに軽減していくか、について、私の考えを述べます。

(当該ソーシャルレンディングの)出資元企業を確認

ソーシャルレンディング会社の対外信用力を測る、という観点においては、
当該会社に対しこれまで出資している、出資元企業の情報を確認する、というプロセスは有益です。
特に、出資元企業が上場企業である場合、
株主に対して出資の判断について説明責任を負うわけですから、
(少なくとも非上場企業と比べれば)出資先企業について、かなり厳しい調査・検討を行ったであろうことが期待されます。

例えば、私も多くの資金を出資している、クラウドクレジットの場合、
伊藤忠商事第一生命等と言った、そうそうたる企業群から、出資を受けています。
最近では、LINE系のベンチャーキャピタルであるLINE ベンチャーズからの出資も明らかになっています。
クラウドクレジットへと出資している企業群はこちら。

ソーシャルレンディングの危険性をヘッジするために、出資元企業の確認は有益です。
引用元:https://crowdcredit.jp/company/

このように、当該ソーシャルレンディング会社への出資元企業について確認をすることにより、
事業者リスクという危険性については、一定程度軽減し得るものと、私は考えています。

上場企業による運営

外部の意見に左右されぬ経営を志し、敢えて非上場であり続けたり、場合によってはわざわざマネージメントバイアウトによって上場廃止を行う会社も少なくないなか、
「上場企業による運営だから、危険性は低く、安心」
「非上場企業による運営は、危険性が高く、不安」
と考えるのは、いささか、時代遅れなことだろうとは、思います。
それでもなお、上場企業による運営である、という点は、事業者リスクという危険性をヘッジする、という意味合いにおいては、少なくない効能を持つものである、と、私は考えています。

  • 上場企業である以上、上場審査を突破している。
  • 上場企業である以上、監査法人によるチェックを受けている。
  • 上場企業である以上、非上場企業と比べ充実した管理部門を有し、社内に関する管理・チェック・牽制機能が働いている。

上記のように期待され得るだろう、と思われることが、その理由です。

例えば、私も多くの資金を出資している、OwnersBookの場合、
東証マザーズ上場企業であるロードスターキャピタル株式会社による運営下にあります。

ソーシャルレンディングの危険性を軽減するためには、運営会社の上場・非上場について確認することも有効でしょう。
引用元:https://loadstarcapital.com/ja/company/history.html

このように、上場企業による運営下にあるソーシャルレンディングサービスを選ぶことにより、
事業者リスクという危険性については、多少なりとも、軽減できるものと、私は考えています。

情報開示姿勢

本記事執筆本日現在、貸金業法に係る規制の関係で、わたしたち個人投資家には、各ファンドの具体的な債務者に係る情報等が、非開示、とされています。
(※もっとも、この点については、規制の改革が検討されているところです)

このように情報の不平等があるなかですので、

  • 規制には抵触しないように注意しながら、
  • ただし、いかに質の高い情報を、多量に、わたしたち個人投資家に対して提供してくれるか、という点は、

ソーシャルレンディング会社が信頼に足るかどうかを検討する際に、有力な着眼点となりえます。
例えば、私も実際に出資を行っているSBIソーシャルレンディングの場合、「最新の実績」ページにおいて、同社の直近のソーシャルレンディング事業の状況について、有意な情報を提供してくれています。

ソーシャルレンディングの危険性を軽減するためにも、各社の情報公開姿勢は要チェックです。
引用元:https://www.sbi-sociallending.jp/total_results

また、同社の場合、各ファンドの償還実績や進捗に関する情報公開にも積極的です。

極論すれば、各ソーシャルレンディング会社の場合、
当局による規制を言い訳にして、ほぼすべての情報を、わたしたち個人投資家から秘匿してしまうことも、出来るわけです。

そのような態度を取ることなく、積極的に情報提供・公開を図っているソーシャルレンディング会社との取引を重視することにより、
事業者リスクという危険性について、やはりある程度有意にヘッジを行うことが出来るであろうと、私は考えています。

ソーシャルレンディングの危険性の研究まとめ

ここまで、ソーシャルレンディングの危険性について、
その概要と具体例、そして、私が考えるそれぞれの危険性の軽減策について、
見て参りました。

少しでも、「これからソーシャルレンディング投資を始めてみよう」とお考えの読者様にとり、ご参考になさって頂ける内容と出来たのであれば、嬉しい限りです。

なお、私は現在、国内23社のソーシャルレンディング会社に、資金を分散投資中です。
そんな私が、国内のソーシャルレンディング事業者各社について情報を整理させて頂いたのが、下記記事となります。
お時間ございましたら、ぜひご覧ください。

【2021年1月最新版】ソーシャルレンディングおすすめ9社&危ない3社比較ランキング【投資初心者必見】

それでは、本記事はここまで。
また次回の記事にて、お会い致しましょう。


本寄稿内容は、寄稿者の個人的な見解・体験・意見であり、その内容は、当ラボの公式見解と異なる場合があります。
また、本記事は、読者様への情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品(ファンド等含む)への投資勧誘を目的としたものではありません。
個別のソーシャルレンディング事業者における投資口座開設や、実際の投資是非に係るご判断につきましては、必ず、読者様ご自身にて、為さって頂きますよう、お願い致します。

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