不動産投資「やめとけ」は本当?不動産投資スタイル別の「やめたほうがいい理由」を徹底検証

「やめとけ」って本当?不動産投資とは

空き地にアパートを建築したり、区分所有マンションの1室を取得したり、はたまた、更地として保有している土地を活用して、駐車場経営を始めたり…。
その具体的な手法・やり方は様々ですが、土地や建物、すなわち「不動産」に対して何らか投資をして収益を得る行為全般を、総じて「不動産投資」と呼びます。
昨今では、上記したようないわゆる「現物」不動産投資以外にも、REIT(リート)投資や、不動産クラウドファンディングへの投資など、「証券化された」(=小口化された)不動産へと投資する手法も、数多く登場しつつあります。

不動産投資の種類には何がある?

個人投資家にとって馴染みの深い不動産投資には、主に下記のような種類があります。

現物不動産投資の種類

  • アパート経営(一棟アパート投資)
    相続や、売却希望者からの購入等によって取得した更地の上に、賃貸用のアパート物件を建築。
    その後、入居者からの家賃収入で、銀行からの借入金を返済し、アパートローンを完済したあとは、物件の修繕費や固定資産税等を支払った後の収入が、全額不労所得扱いとなる、というのが魅力の不動産投資スタイル。
    会社員・サラリーマンにも馴染みが深く、「不労所得=アパート経営」と連想する人も少なくありません。
  • マンション投資(区分所有)
    分譲型マンションの居室(区分所有物件)に対して投資し、入居者へと賃貸、その後、定期的に賃料収入を得る不動産投資スタイル。
    土地を取得して新築アパートを建築する場合と比較すると、同じ新築物件でも、比較的少額の投資資金からスタートすることが出来、「ワンルーム投資」等とも呼ばれることもあります。
  • 戸建て投資
    アパートやマンション等の集合住宅ではなく、1戸建ての居住用物件へと投資。
    主にファミリー層をターゲットに入居者を集め、長期に渡り賃料を得ていくことを目的とした不動産投資スタイルです。
    入居者の退去後には、建物を取り壊し、更地から再開発することも出来る、等、出口戦略が豊富であることも、メリットのひとつとされています。
  • 駐車場経営
    更地にロープなどで区分けをして、月極駐車場として運営したり、料金機や車止めを設置して、コインパーキング等として運営。
    アパート経営等の場合と比較して、不動産(土地)の転用が簡単、等と言ったメリットがある一方で、上空空間の活用(アパートの2階、3階部分)に難があり、土地の利用効率が低い、というデメリットも指摘されています。
    また、平置き型の駐車場よりも収益性の高い、自走式駐車場や多段式駐車場などの立体駐車場の場合は、相応の建設コストが生じてくることとなります。
  • 底地投資
    借地権を持つ借地人から、地代の形で賃料収入を収受。
    定期的な地代収入以外にも、建物立替工事の承諾手数料など、様々な名目で、一時金収入を得ることが出来るのもメリットですが、遥か昔に締結された借地契約の場合、地代が現在の経済状況と比較して極めて廉価に設定されていることが多い、等の注意点があります。

証券化された不動産への小口投資の場合

  • REIT(リート)投資
    不動産投資ファンドの発行する証券(投資口)に対して投資。
    上場リートの場合、市場の立会時間中であれば、(買い手がつけば)いつでも自分の証券を売却して換金できる、という利点があります。
    また、アパート建設やマンション投資等の現物不動産と比較し、遥かに少額(REIT銘柄にもよるが、概ね、数万円~数十万円程度から買い付けが出来る)から、間接的な不動産投資をスタートすることができる、というのも、メリットのひとつです。
  • 不動産クラウドファンディング
    不動産特定共同事業法に基づく許可を受けた、不動産クラウドファンディング事業者の募集するファンドに対して出資。
    オンラインで、1万円程度の少額から出資できる、というメリットがある一方で、不動産特定共同事業者の倒産リスクから隔離がされていないケースが多い、など、業界には課題もあります。

その他、アルタナティブ系の不動産投資

  • 民泊投資
    マンションの居室や、戸建て物件の中の1室などを、旅行者向けの宿泊場所として提供。
    入居者から「月額賃料」の形で収入を得るのではなく、宿泊者から「宿泊料金」の体裁で料金を収受することが出来るため、物件の収益力が大きく高まる可能性があります。
    しかしながら、昨今のコロナ・ショックのように、旅行需要に大きなインパクトを与える出来事があると、収支計画が大きく狂っていくリスクもあります。
  • シェアハウス投資
    「5LDK」など、複数の居室がある戸建て物件等を改装し、1つの居室に1人ずつ、入居者を募集。
    リビングやキッチンなどは共用で利用してもらい、一般的な賃貸住宅よりも廉価な入居費・賃料で、入居者付け(リーシング)を狙う不動産投資スタイル。
    「女性専用シェアハウス」「コワーキングスペースを充実させたシェアハウス」などの特色を出すことで、他のシェアハウス物件との差別化を図ることも可能です。

「やめとく」前に知っておきたい、不動産投資のメリットとは

不動産投資には、前述したように、様々な種類があり、それぞれに、主に下記のようなメリットがあります。

アパート経営やマンション投資等、居住用の現物不動産投資のメリット

アパート経営やマンション投資等、居住用の現物不動産投資のメリット
アパートやマンションなど、いわゆる「居住用」の不動産へと投資には、利回り以外にも、様々なメリットがあります。不動産投資家の間で話題にのぼることが多い「節税メリット」も、そのひとつです。
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  • 家賃収入という、比較的安定した不労所得を手にすることが出来る。なお、家賃収入の場合、基本的にインフレに強く(※賃料は物価との連動性が強いため)、かつ、不況時でもある程度安定している(※仮に不況に陥ったとしても、居住者は、自身の居室の賃料については、他の支出と比較して優先的に支払ってくれる傾向が強い)、と言われている。
  • 建物部分の減価償却費によって、不動産投資事業を赤字化し、その会計上の赤字(=キャッシュ・アウトは伴わない赤字)で、給与所得等の課税所得を圧縮することで、源泉所得税や住民税といった税金の節税を図ることができる。
  • 更地の上に、建物(アパート等)を建築することにより、固定資産税、及び、都市計画税の負担を軽減する効果が期待できる。
  • 金融債権(元預金等)として資産を相続するのではなく、不動産に転換して相続した方が、相続財産評価額を下げることができる。また、更地のままで相続する場合と比較して、その上にアパート等の収益用不動産を建築して相続した方が、相続財産評価額をさらに引き下げ、相続税の節税効果を見込むことができる。
  • 団体信用生命保険(通称、団信)を活用すれば、投資家に万が一のことがあった場合でも、アパートローンの残債務の返済が免除され、かつ、賃料収入というキャッシュ・フローを生む不動産を、家族に残すことができる。このため、一種の生命保険代わりとして、不動産投資を活用することができる。
  • まとまった投資用資金を用意することが難しい会社員・サラリーマンの場合でも、銀行等の金融機関が提供するアパートローンを活用することで、レバレッジの効果を生かした不動産投資を行うことができる。
  • スキルの高い不動産管理会社等をうまく活用し、物件管理に必要な業務を委託することができれば、投資家自身の手間暇を削減して、実質、不労所得化することができる。
  • 駐車場経営等と比較して、土地の上空空間を、アパートの2階・3階部分として活用することができるため、同じ土地面積を利用する場合でも、土地資産の運用効率が高い。

駐車場経営による不動産投資のメリット

  • 駐車場経営の場合、アパート経営等と違い、土地の上に建物を建設する必要がないため、初期投資が割安となる。
    例えば、月極駐車場の場合、区分け用のロープを設置するだけでも、簡易的な駐車場経営がスタートできる。
    コインパーキング型とする場合、車止めの設置や、料金機の設置が必要となるが、それでも、マンション投資やアパート経営と比較すれば、比較的安価に不動産投資をスタートすることができる。
  • マンションやアパートといった、居住用建物の建設には適さないような、狭小地・変形地でも、駐車場には利活用できるケースがある。
  • 敷地の上に設置される設備がそもそも限定的(コインパーキングの場合でも、車止めと料金精算機程度)であるため、設備の老朽化への対応(修繕等)が、アパートやマンション等の居住用物件と比較すれば、容易、かつ、廉価に済む。
  • 初期投資が小さくて済む分、仮に、駐車場経営がうまくいかなかった場合、他の不動産投資へと、敷地を転用することが容易。
    また、月極駐車場の場合でも、借地借家法の適用対象外となるため、物件オーナー側から利用者に(遅くとも数ヶ月前程度に)事前通知すれば、駐車場の利用者を、比較的容易に立ち退かせることができる。

REIT(リート)を活用した不動産投資のメリット

  • アパート経営や、マンション投資等の現物不動産投資の場合、どうしても、数百万円から数千万円、場合によっては数億円程度の投資用資金が必要となるが、REIT(リート)への投資であれば、投資口価格は、概ね数万円から数十万円程度と低額。
    さらに、複数のREIT(リート)へと投資する、いわゆるリートファンドを活用すれば、ネット証券会社を通じて、数百円程度からの少額投資も可能。
    まとまった不動産投資用の資金がない投資家の場合でも、銀行融資等を活用することなく、100%自己資金で、不動産投資をスタートすることができる。
  • REIT(リート)においては、投資信託及び投資法人に関する法律の規定により、不動産の所有者は、REIT(リート)の運用会社とは別の法人格を持つ「投資法人」とされている。
    このため、仮に、REIT(リート)の運用会社が破産するようなことがあっても、その倒産リスクからは、不動産が隔離されていることとなる。
  • 一般の個人投資家が現実的に投資対象とできる不動産は、アパートやマンションといった居住用のもの、かつ、小規模なものに限られるが、REIT(リート)の場合、大規模なオフィスビルやホテル、倉庫など、一般個人投資家の資金力では、なかなか投資ができないような、大型・優良物件にも、間接的に投資を行うことができる。
  • 一般的に、1つの銘柄のREIT(リート)のポートフォリオには、多数の大型不動産が組み入れられており、ひとつひとつの物件が持つリスク(ボラティリティ)が標準化されている。
    一般の個人投資家レベルでは、これほどの規模の不動産に対して、これだけの数量の分散投資を行う事は、現実的には不可能である。
  • 上場リートは、金融商品取引所の上場銘柄であるため、投資家において資金ニーズが生じた場合は、市場を通じて、速やかに売却し、換金することができる。
    このため、アパート経営やマンション投資の場合と比較して、資産としての流動性が高い。
  • REIT(リート)の運用は、投資家ではなく、運用会社が専門的に行うため、投資家自身が、直接資金や不動産を運用する必要がない。このため、不動産投資初心者の場合でも、比較的気軽に不動産投資に取り組むことができる。

クラウドファンディング型の不動産投資のメリット

クラウドファンディング型の不動産投資のメリット
インターネットを活用したクラウドファンディングは、今や不動産投資業界にまで浸透しています。オンラインでの小口出資による「不動産クラウドファンディング投資」には、特に若年投資家・投資初心者にとって、様々なメリットが指摘されています。
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  • 不動産クラウドファンディング事業者が、ファンドに対して、共同・劣後出資することによって、投資家の優先出資元本を保護する、いわゆる「優先劣後スキーム」が採用されているケースが多い。
    この場合、ファンドの運用に赤字が生じたとしても、まずは、不動産クラウドファンディング事業者の劣後出資分から毀損がスタートするため、投資家の優先出資元本が、既存を免れることができるケースがある。
  • 不動産特定共同事業法第26条の定めにより、投資家は、クーリングオフを活用して、自身の出資を(出資契約締結から一定期間内であれば、)解約することができる。
  • 外部の保証会社が、ファンドの投資対象不動産について、一定の金額での買取保証を提供しているファンドがある(=物件の売却が不調となるリスクが軽減されているケースがある)。
  • プロパティーエージェント社の運営する「Rimple」(リンプル)や、穴吹興産株式会社の運営するジョイント・アルファ、トーセイ社の運営するTOSEIクラウドファンディングなど、東証一部上場企業が直接運営している不動産クラウドファンディング・サービスも、複数存在する。

不動産投資は「やめとけ」と言われる理由とは

前述したように、その類型ごとに、様々なメリットがある不動産投資ではありますが、同時に、複数のデメリットもあります。
主にそうしたデメリット(=不動産投資の「負」の側面)に着眼し、「不動産投資はやめとけ」と主張する先輩投資家も少なくありません。

ここからは、不動産投資が「やめとけ」と言われる主な理由を、不動産投資のスタイルごとに、検証していきます。

「アパート経営やマンション投資、戸建て投資は、やめとけ」と言われる理由は

居住用不動産への投資は、空室リスクが怖いから、やめとけ

アパートやマンション、戸建て物件などの、いわゆる居住用不動産に対して投資する場合、事前の想定通りに入居者がついてくれない、いわゆる「空室リスク」の存在に対して留意が必要です。
実際に空室が発生すれば、その間、賃料収入を得ることができないほか、物件の売却交渉時においても、空室の存在は、買い手候補者から買い叩かれる要因のひとつとなります。

また、区分マンション投資や戸建て投資のように、1つの物件に対して、入居者が1組のみ、という不動産投資スタイルの場合、賃料収入は「オール・オア・ナッシング」であるため、空室リスクがより顕著になります。

※逆に、1棟の中に複数の居室があるアパート物件投資や、1つの部屋を複数の居室に区切って貸し出すシェアハウス投資の場合、賃料が「いきなりゼロになる」リスクは、比較的小さい、と言われています。

家賃を滞納する人など、悪質な入居者への対応が面倒だから、やめとけ

アパートやマンション、シェアハウス等に対し投資する場合、入居者の質には十分な注意をしないと、入居者同士のトラブル等への対応に、手間を取られる可能性があります。
また、悪質な入居者の場合、家賃の支払いを滞納させるなど、不動産投資のキャッシュフローに対しても、直接的な悪影響を及ぼすリスクがあるほか、アパート物件やシェアハウス投資の場合、一部(場合によっては、ひとり)の悪質な入居者の存在が原因で、その他の居室へのリーシングや、入居者集めにも、多大な悪影響が生じる恐れもあるため、特に注意が必要です。

居住用不動産の場合、物件の修繕が大変だからやめとけ

特に、アパート経営や戸建て投資等、「建物全体」をオーナーが保有するタイプの不動産投資の場合、長期にわたって不動産投資を継続していると、物件の修繕コストが、次第にかさんでくるようになります。
部屋の中の簡単な内装や、壁紙の張り替え程度の修繕であれば良いですが、

  • 壁の内側の給排水管の取り替えや、
  • 共用の階段部分の改修工事、
  • 屋根の補修や、雨漏り改修工事等といった、大規模な改修工事の場合は、

対処に必要な費用が高額にのぼることも、ままあります。

しかしながら、そうした修繕対応を後回しにしていると、入居者からのクレームが相次いだり、空室が発生しやすくなったり、などといった問題が生じることがあるため、注意を要します。

なお、区分所有マンション投資の場合、毎月の修繕積立金を積み立てておけば、共用部の修繕については、マンションの管理組合が、積み立てられた修繕用予算を元手に実施することとなりますが、区分・専有部分の修繕については、当然、物件オーナーが個別に対応する必要があります。

借り入れを伴う不動産投資の場合、金利変動リスクが怖いから、やめとけ

不動産投資の初心者が、アパート経営やマンション投資に取り組む場合、基本的には、全額を自己資金で用意するのではなく、銀行等の金融機関が提供する、アパートローンや、投資用ローンを活用することとなります。

この際、ローン契約の仲介をする不動産会社や、ローンを貸し出す金融機関の担当者は、当座の金利が安い、変動金利型のローン商品を提案することがままあります。
しかしながら、変動金利型の場合、定期的に金利の見直しが行われ、その都度、金利が上昇すると、それに応じて、総返済額が膨らんでしまうリスクがあります。
また逆に、金利の上昇を恐れて、長期固定金利で借り入れを行うと、その後、物件の早期売却に伴って、借入金の繰り上げ返済を行うと、金融機関から、違約金を請求される場合もあります。

不動産会社とのサブリース契約は、トラブルが多いから、やめとけ

不動産会社とのサブリース契約は、トラブルが多いから、やめとけ
主に居住用不動産のオーナーが活用しているケースも多い、サブリース契約。物件の空室リスクを軽減させる効果が期待できる反面、あらかじめ契約内容についてしっかり確認しておかないと、様々なトラブルの温床にもなりやすい、というデメリットがあります。
※画像はイメージです。

アパート・オーナーや、区分マンション・オーナーの中には、空室リスクを軽減するために、不動産管理会社等とのあいだで、サブリース契約を締結することがあります。
しかしながら、サブリース契約には、下記のようなトラブルが付き物ですので、事前に十分な留意が必要です。

  • サブリース会社の提案する家賃保証率が、低い(家賃満額の、7割~8割程度が相場)。
  • 契約更新のたびに、保証家賃の見直しが行われ、その都度、保証賃料が下がることが多い。
  • アパートの新築直後や、入居者が退去した直後の期間においては、数ヶ月から半年程度の、家賃保証の免責期間が設けられることもある。
  • サブリース会社が倒産してしまえば、サブリース契約そのものが、反故になることもある。
  • 物件のオーナー側からは、サブリース契約の解約は容易ではないが、サブリース会社側からは、物件の賃貸借契約の解除が容易に行える。

不動産投資初心者は「底地投資は、やめとけ」と言われる根拠とは

底地投資は利回りが低いから、やめとけ

借地契約は、基本的に数十年以上の長期に渡っており、更に長期の契約も多く存在します。
特に、明治期~昭和初期に締結された借地契約の場合、その地代は、現在価値で考えると、かなりの低額で設定されていることが多くあります。
地代の改定そのものは(物理的には)可能ですが、地代改定を行うためには、当然、借地権者の同意が必要であるため、特に昔からの借地権付き底地の場合、収益率が極めて低いケースが少なくありません。

また、底地の上の建物の所有者は、当然、底地の所有者ではなく、借地権者であるため、底地所有者が、自由に物件のリノベーションなどを行うことも、当然、出来ません。
このため、不動産としての収益力を底上げしようと考えても、実際に打てる手立てが少ない、というのも、底地投資のデメリットのひとつと言われています。

底地は銀行融資を受けづらいし、売却による現金化が困難だから、やめとけ

底地不動産の場合、物件所有者の権利内容に制限があるため、銀行としても(通常の所有権を確保できる土地と比較して)担保価値を高く見込みづらい、という事情があります。
このため、底地不動産を担保にして、銀行から融資を受けることは、基本的に難しい、というのが実情です。

また、銀行が担保価値を見込みづらい、ということは、(底地の所有者はもとより、)購入希望者も同じように、銀行からの融資を受けられない、ということを意味します。
このため、底地物件の場合、購入候補者が自然と限られ、相応の資金力のある投資家でない限り、現実的には購入を検討してもらえず、売却による現金化が難しい、というリスクも指摘されています。

実際に売却によって底地不動産を現金化するためには、

  • 底地を、現在の借地権者に買い取ってもらうか(※ただし、地代が安く、借地権者が、「買い取るよりも、借り続けたほうが、得策だ」と判断する場合もある)、
  • 借地権者から借地権を買い戻して、通常の土地として売却するか(※借地権者が、高額な買取り料金を請求してくるケースもある)、
  • 借地契約の終了を待つ(※ただし、借地契約は基本的に長期であるため、契約満了まで、数十年単位の待ち時間が生じるケースもある)、

といった手法を採る必要があります。

底地不動産を相続する場合は特に要注意

底地不動産を相続するにあたり、相続税を現金で支払うために、底地不動産を、専門の不動産業者に買い取ってもらうことを検討するケースもあります。
ただしこの場合、買取り価格の相場は、通常の更地で売却する場合と比較し、10%~20%程度(=8割~9割引き)と、極めて割安になってしまうことが一般的です。

一方で、土地の相続税評価額は、あくまでも、路線価に対して、借地権割合(実際の借地権割合は、地域によって異なります)を掛け合わせて算出されるため、結果的に、相続税評価額のほうが、買い取り業者の提示する買い取り額よりも高くなってしまうことが多い、というのも実情です。

すなわち、底地不動産の相続に伴う相続税を支払うために、当該底地を売却したとしても、実質、赤字となってしまう可能性がある、という点に、底地の被相続人においては、十分な注意が必要です。

「リート(REIT)投資は危ないからやめとけ」と言われる理由は

リート(REIT)の場合、短期的に投資口価格が急落するリスクがあるから、やめとけ

リート(REIT)の価格(投資口価格)は、取引市場における需給のバランスで決定されます。

リートへの投資意欲が旺盛な時期であれば、投資口価格も上がりやすく、売買のタイミングによっては、(分配金収入のみならず)売却益(キャピタル・ゲイン)を得ることが出来る場合も少なくありません。

ただし、逆に、市況が冷え込んでいる時期等においては、投資口価格が急落する恐れもあります。
現に、2008年~2010年頃にかけてのリーマン・ショック時には、多くのリートの投資口価格が急落し、これらの影響で、複数の不動産投資法人が倒産してしまったケースもあります。
また、昨今のコロナ・ショックにおいても、一部のREITの投資口価格は、および半値程度まで急落しました。

金融市場という、極めて流動性の高い市場において取引されている分、アパートやマンション、等といった現物不動産そのものと比較すると、その価格には、かなりのボラティリティがある、というのが実情です。

リート(REIT)の保有期間中に、どれだけコンスタントに分配金を受け取っていたとしても、最終的な売却時の投資口価格が、取得時の価格と比較して大幅に下落していれば、トータルでの損益が、マイナスとなってしまう恐れがある、という点にも、留意が必要です。

リート(REIT)の場合、所得税や住民税、相続税等の節税効果は皆無だから、やめとけ

不動産投資に取り組む投資家の多くは、

  • 物件の建物部分の減価償却費を活用した、所得税・住民税の節税効果や、
  • (更地の上に物件を建てることによる、)固定資産税・都市計画税等の節税、
  • (現預金→不動産、ないしは、更地→居住用不動産への転換による、)相続税の圧縮効果などに期待して、

不動産投資について情報収集を行うケースが多々あります。

しかしながら、リート(REIT)投資の場合、投資家が直接的に、土地や建物等の不動産を保有するわけではないため、当然のことながら、物件の建物部分の減価償却費を、投資家が自分の確定申告において損失として計上することは、出来ません。

また、リート(REIT)投資において投資家が保有する「投資証券」は、相続財産評価としては、金融債権に該当し、「不動産」としては評価されないため、相続税の圧縮効果を期待することも、不可能です。

「不動産クラウドファンディングは危ないからやめとけ」は本当か

不動産クラウドファンディングでは、iDeCo口座や、つみたてNISA口座を利用した投資ができないから、やめとけ

不動産クラウドファンディングでは、iDeCo口座や、つみたてNISA口座を利用した投資ができないから、やめとけ
「クラウドファンディング型の不動産投資」として注目されている不動産クラウドファンディングですが、主に税務面で、複数の課題が指摘されています。iDeCoや「つみたてNISA」の税制優遇を活用できない、というのも、そのひとつです。
画像引用元:iDeCo公式サイト

不動産クラウドファンディングのように、金融商品に対して投資する場合、特に長期投資を前提とする場合においては、税金コストの節約は重要課題となります。

例えば、不動産投資家の間でも認知度の高い、インデックス投資の場合、つみたてNISAやiDeCoといった、政府の投資支援制度のメリットを、最大限に活用できる、という利点があります。

特にiDeCoの場合、毎月の拠出金の全額が所得控除となるため、「投資しているだけで、所得税及び住民税の節税になる」という大きなアドバンテージがあるほか、つみたてNISAの場合も、最長で20年間に渡り、つみたてNISA口座内で保有している投資信託の分配金及び値上がり益が、非課税にて運用できる、という利点があります。

これに対して、不動産クラウドファンディング投資の場合、上述のiDeCo口座や、つみたてNISA口座を利用した投資はできません。
投資した資金が所得控除されるようなこともありませんし、不動産クラウドファンディング事業者から分配金を、非課税で受け取ることも不可能です。

不動産クラウドファンディングの場合、出資の中途解約が出来ず、換金も困難だから、やめとけ

不動産クラウドファンディングに投資する場合、投資家は、不動産クラウドファンディング事業者(≒不動産特定共同事業者)との間で、不動産特定共同事業契約を締結しますが、この契約は、ファンドの運用期間中、原則として、投資家側からの申し出によって中途解約することはできなせん。

仮に、全ての投資家に対し、出資の中途解約を認めてしまえば、投資対象不動産の周辺地域で災害が発生する等した場合、多量の投資家から、一斉に、中途解約申請が寄せられ、(その時点では手元にキャッシュが無い)不動産クラウドファンディング事業者のキャッシュフローがショートしてしまうリスクがあるため、です。

また、不動産クラウドファンディングへの出資持分に関しては、リートの投資口(投資証券)のような、万人参加型の取引市場が存在しません。
さらに、投資家は不動産を直接所有しておらず、あくまでもファンドへの持分を保有しているだけ、であるため、通常の不動産投資のように、所有下にある不動産を第三者に売却して現金化することもできません。

このように、不動産クラウドファンディングには、そのビジネスモデルの性質上、重大な流動性上の不具合があり、投資家にとっては、看過しがたいリスクとなります。

クラウドファンディング型の場合、不動産の値上がり益(キャピタル・ゲイン)は基本的に狙えないから、やめとけ

不動産投資における収益は、大きく分けて、

  • 取得した不動産を第三者に賃貸し、その賃借人から受け取ることのできる、賃料収入(インカム・ゲイン)と、
  • 物件を、取得価格よりも高額で売却することによって生じる、売却益(キャピタル・ゲイン)とに、

大別されます。

不動産クラウドファンディングの場合、ファンドの予定利回りは、ファンド募集の時点で投資家向けに明記されていますが、その予定利回りの大半は、上記の2つの不動産投資収益のうち、インカム・ゲインで構成されています。
物件が高額で売却出来た場合に生じる、キャピタル・ゲインに関しては、ファンドに対して劣後出資している、不動産クラウドファンディング事業者が、「総取り」することが一般的です(※)。

不動産クラウドファンディング事業者側から見れば、

  • 不動産取得費用の大半は、投資家に拠出させておいて(≒投資家にダウンサイド・リスクを負担させておいて)、
  • 投資家に対しては、物件の短期保有期間中の賃料収入(=インカム・ゲイン)だけ、分配しておき、
  • 肝心のキャピタル・ゲインは、不動産クラウドファンディング事業者側で総取りする、

という、極めて都合のいいビジネスモデルとして利用できる、という側面があります。


(※)一部の不動産クラウドファンディング事業者においては、キャピタル・ゲイン相当部分についても、一定割合まで、投資家に対して分配するファンドを募集しているケースもありますが、いずれにせよ、少数派です。

不動産特定共同事業者の倒産リスクから隔離されていないから、やめとけ

不動産クラウドファンディングの場合、不動産特定共同事業法上の許可は、第1号許可から、第4号許可まで、合計4種類が存在します。
かつ、不動産特定共同事業者と投資家との間の契約形態に関しては、「匿名組合型」と、「任意組合型」の2種類が検討可能です。

すなわち、全部で8通りのビジネス・パターンが存在するわけですが、国内の不動産クラウドファンディング・サービスの大半は、「不動産特定共同事業法第1号事業許可」と、「匿名組合」の組み合わせで展開されています。

この場合、ファンドは、不動産クラウドファンディング事業者の内部に組成される関係上、

  • 投資家がファンドに出資した資金や、
  • その資金で取得した不動産は、

商法536条の定めにより、不動産クラウドファンディング事業者の財産として取り扱われることとなります。

このため、仮に、不動産クラウドファンディング事業者が、その他の事業等で失敗し、破産手続きへと移行することとなった場合、投資家の出資金や、その資金を元手に取得された不動産についても、不動産クラウドファンディング事業者の財産として、同社の破産財団へと組み入れられ、一連の破産手続きの中で、処分されてしまうこととなります。

これは、いわゆる「倒産隔離」が十分に図られていない状態であり、REIT(運用会社とは別の、投資法人が、不動産を保有することで、倒産隔離が図られている)に対しては積極的に投資するプロ投資家(機関投資家等)が、不動産クラウドファンディングに対しては決して投資をしない理由のひとつとされています。

不動産クラウドファンディング事業者からの分配金は「雑所得」扱いとなり、税務上、不利だから、やめとけ

投資家が不動産クラウドファンディング事業者から受け取る分配金は、所得の分類上、「雑所得」に該当し、総合課税の対象とされます。
申告分離課税の利用ができないため、分配金は、投資家の給与所得等と合算して課税されることとなるため、特に給与所得等の大きい、いわゆる「高所得者」が不動産クラウドファンディングに対して投資すると、不動産クラウドファンディング事業者からの分配金に対しても、高税率が課せられてしまうこととなるリスクがあります。

また、雑所得の特質上、その他の所得分野との間での損益通算は認められていないほか、単年で生じた損失の、繰越も認められません。

Author Info

不動産投資検証チーム
fill.mediaは、国内の融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)や、不動産クラウドファンディング、ロボアドバイザー、インデックス投資業界等の最新情報を提供する、投資・金融情報総合メディア。
その他、昨今、主に若年投資家の間で大きな関心を集めつつあるFIRE(Financial Independence, Retire Early)に関する最新情報を専門的に扱う、FIRE(早期リタイア)専門の検証チームや、不労所得に関する検証グループ等があります。

不動産投資検証チームでは、アパート経営やマンション投資、戸建て投資、REIT(リート)投資等、様々な不動産投資スタイルに関して、その長所・短所を検証し、各ビジネス・スキームについて、深く掘り下げた分析・情報を提供しています。

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